Ogishi Ryuji
大岸 龍司さん
リコー 生産部門
社内副業制度とは、勤務時間の一部(20%以内)を使って、社内でやってみたい仕事やテーマ、活動にチャレンジできる仕組みのこと。社員自身のキャリアアップにつなげ、若手社員の自己成長やベテラン社員の貢献領域の拡大等により、社員にとっても会社にとってもいきいきと成長につながる状態を実現することを目的としている。
今は、生産現場で用いるインクジェットプリンターの画像検査ソフトを作っています。製品出荷前の生産工程での検査ですね。もともと生産工程を設計する部署にいたのですが、入社してからもソフトウェア開発に携わりたかったんです。大学で情報理工学を修めていたので。
趣味でスマートフォンアプリを作っていました。たとえば、顔の写真を撮影すると、輪郭やパーツから「顔の面積」を算出して、より良く見える"ゴールデンバランス"との差異を教えてくれます。遊びで使えるものですが、計算が複雑で意外に難易度も高く、挑みがいがありました。
アプリ開発は趣味でしたが、これを本業に活かしたいとは思っていたんです。ただ、生産本部ではアプリ開発の仕事はあまりなく、思っていただけで過ごしてきて......それで、リコーのイントラサイトに社内副業制度の案内が掲出されたとき、偶然いまの副業先である部門で、スマートフォンアプリの開発者を募集しているのを目にしました。
介護施設向けアプリです。介護施設の従業者が、施設の利用者の状況をアプリで把握できるものです。ベッドの脚に取り付けたセンサーで、体重や動きを検知してデータをサーバーへ送る「見守りベッド」という取り組みがあるのですが、それをスマートフォンアプリで使えるように展開したいという要望がありました。 最終的には僕を含めた3名が副業で携わり、開発しています。他の2人は研究部門から来ていて、彼らもアプリ制作は趣味。技術交流会などもしながら、楽しく進められています。
内製であることの良さもあると思います。技術力が貯まったり、仕様をディスカッションしながら実験的に作れたり。副業先の部門のみなさんとは、単に受発注の関係ではなく、協力者として伴走できたのは良い体験でした。
開発を初めて2ヶ月ほどでUI(ユーザーインターフェース)が固まりつつあり、副業期限の7月までには介護施設へ提供できる製品版の完成を目指しています。
明確に20%を分けるというよりは、本業のスキマ時間に進めているのがほとんどです。ただ、アプリ制作にやりがいを強く感じているので、なるべく時間を作ろうと本業も効率よく進めるように努めています。本業でも時間への意識は、はっきり変わりましたね。
20%の管理は、上司に工数報告を毎週することで、超過度合いを確認・認識しあってきました。毎日の報告はお互いに面倒なことも多いですから、週末の金曜に「今週はこれだけ副業しました。来週はこれだけやろうと思っています」と伝えるスタイルに落ち着きました。
本業が忙しいときに副業の時間が取れないとき、他の2名の副業メンバーに迷惑をかけてしまったのは苦しんだところですね。ただ、副業をしていることに関して、部署の同僚は「すごくいいね!」と言ってくれています。僕が楽しそうにしゃべるからなんでしょう(笑)。
趣味を仕事にすると楽しくなくなるのでは、と思っていたのですが、 全然そんなことはなくてもっと取り組みたいです。ただ、異動したいという考えはなく、副業が私にとっては「ちょうどいい」感覚ですね。アプリ開発への「好き」という思いをベースに、20%のバランスを取りながら進められているのがいいな、と。それに、本業で取り組み始めたソフトウェア開発も楽しいですから。
そうですね!それに、本業を疎かにしてしまうと「副業なんてしているからだ」となってしまいますから、本業は本業でちゃんと結果を出さないといけないと思っています。だからこそ、相互に良い作用が働いています。
たとえば、気分が切り替わっていいという情緒的な面もあれば、習得した技術を横展開できたりすることもあります。プロジェクト管理ツールも、副業メンバーからいろいろと教えてもらって本業に反映しましたね。
転職も選択肢には挙がりますが、リスクとハードルは高くありますよね。ただ、これまでなら社外へ出るしかアプリ開発はできないと思っていましたから、社内副業制度があって本当によかったです。楽しいと思える本業と、チャレンジできる副業に集中できる環境が、今の私にはぴったり。
社内副業制度でさまざまな取り組み方が可能になって、「転職したい」という気持ちは全くなくなりました。
企画:山本 雄生(NewsPicks Enterprise) 取材・構成:長谷川賢人
(取材日:2020年4月3日)