第118回定時株主総会招集ご通知証券コード : 7752
株式会社リコー2017年度の世界経済は、前年度からの回復基調を維持し、全体として堅調に成長しました。日本、米国では、緩やかな経済成長が続いており、欧州もBrexit(英国のEU離脱)などによる先行きの不透明感はありながらも堅調に推移しました。一方で、中国は緩やかな減速基調が続きました。
主要通貨の為替レートは、対ドルは前年度とほぼ同水準の推移となり、対ユーロは円安基調で推移しました。
そのような経済情勢の中で、当社の主力事業である事務機の需要は、先進国で緩やかな需要の減少が続く一方で、新興国では需要が拡大し、全体として前年からほぼ横ばいで推移しました。しかしながら金額ベースでは、新興国を中心とする低価格帯の製品需要の拡大による平均価格低下と、継続的な消耗品価格低下の影響を受け、緩やかな減少が続いています。一方、当社が成長領域と位置付けている商用印刷や産業印刷では、デジタル化の進展により、需要の堅調な拡大が続いています。
第19次中期経営計画の初年度となる当年度は、「リコー再起動」を掲げ、成長を阻害する要因はすべて取り除くべく、過去の前例にとらわれず、コスト構造改革、業務プロセス改革、成長事業の育成・拡大、経営システム改革などに取り組んでまいりました。
当年度は、生産拠点の統廃合、開発機種の絞り込み、本社および間接業務の効率化などの施策を進め、コスト構造改革の活動に一定の目途をつけることができました。また、成長事業へ経営資源を集中させるために事業・資産の見直しを進め、電子デバイス事業および観光事業のパートナーへの一部株式譲渡などを実施しました。さらに、取締役会の体制や仕組みの見直し、グローバルガバナンス強化のための社内体制や管理体制の見直しを進め、コーポレートガバナンスのさらなる強化と透明性の向上を図りました。
2017年度の連結売上高は、前年度に比べ1.7%増加し、2兆633億円となりました(①)。米国での販売体制の見直しに伴う一時的な販売活動量の減少などによりオフィスプリンティング分野の売上高が減少したものの、成長領域であるオフィスサービス分野、産業印刷分野、その他分野の産業プロダクツなどが増収となったことに加え、円安の影響などもあり、売上高は前年比増収となりました。
地域別では、国内はオフィスサービス分野、その他分野が成長し、前年比増収となりました。米州は、オフィスプリンティング分野の減少などにより、減収となりました。欧州・中東・アフリカはオフィスサービス分野、商用印刷分野などの成長と為替の影響により増収となりました。その他地域は、オフィスプリンティング分野、産業印刷分野などが成長し、増収となりました(②)。
売上総利益は、オフィスプリンティング分野での売上高減少の影響を受けた一方で、売価維持施策の展開や製造原価低減などによる利益創出に加え、為替の影響などにより、前年度に比べ0.3%増加となる、7,910億円となりました。
販売費および一般管理費は、構造改革効果の創出、業務プロセス改革などによるその他の経費支出の抑制を進めた一方で、構造改革費用、リコーインド関連費用などの計上により、前年度に比べ3.0%増加となる、7,779億円となりました。
なお、当年度は、構造改革費用として315億円を計上しました。構造改革効果としては、施策を前倒して進めたことなどにより、一過性の収益111億円と、固定費削減416億円を創出しました。2017年度から2019年度までの3年間に累計1,000億円の構造改革効果を創出する目標に対し、計画以上に進展しました。
また、当年度は、過去の企業買収に関わるのれん等の固定資産の減損損失として1,759億円を計上しました。これは、第19次中期経営計画における成長に向けての戦略転換に伴い、事業領域の再定義を行い、また、よりきめ細かな意思決定、事業管理体制に変更したことから、減損判定の単位の見直しを行い、新たに設定した単位での減損テストの結果、減損損失の計上となったものです。
以上の結果、営業損益は、減損損失の影響により、1,156億円の営業損失となりました。しかしながら、リコーインド関連費用、減損損失、構造改革費用、一過性収益などの特殊要因を除くと、営業利益としては860億円相当となり、前年度と比べて実質的な収益力(稼ぐ力)の強化を着実に進めることができました(③)。
*1 構造改⾰費⽤106億円、リコーインド関連費⽤69億円、減損損失95億円を除いた営業利益
*2 構造改⾰費⽤315億円、リコーインド関連費⽤52億円、減損損失1,759億円を除いた金額から、⼀過性収益111億円を引いた営業利益
金融収益および金融費用は、前年度に比べ為替差損が増加し、税引前損益は、1,241億円の損失となりました。
以上の結果、親会社の所有者に帰属する当期損益は、1,353億円の損失となりました(④)。
また、当年度は、構造改革施策の展開などにより、キャッシュ創出力の強化を進めました。
総資産は、資産の見直しを進めたことと、減損損失の影響により、前年度から1,182億円減少となる2兆6,410億円となりました。
親会社の所有者に帰属する持分は、前年度から1,325億円の減少となる9,095億円となりました。株主資本比率は34.4%と引き続き安全な水準を維持しています(⑤)。
また、フリーキャッシュフローは、構造改革活動による事業収益力の改善、棚卸資産の削減、資産見直しなどにより、前年度から476億円の収入増加となる292億円の収入となりました(⑥)。ファイナンス事業の影響を除くフリーキャッシュフローは、659億円の収入となり、2019年度までの3年間累計で1,000億円を創出する目標に対して、順調に推移しています。
1. 減損損失の概要
2017年度第4四半期において、資産の減損損失として1,759億円を計上いたしました。主な減損損失の事業別の内訳は、オフィスプリンティング事業:1,487億円、オフィスサービス事業:269億円となっております。
減損損失となった資産は、地域では主に米国の“のれん”、有形固定資産および無形資産となります。オフィスプリンティング事業では、2008年に買収したIKON Office Solutions, Inc.(以下、IKON社)の“のれん”が含まれております。オフィスサービス事業では2014年に買収したmindSHIFT Technologies, Inc.(以下、mindSHIFT社)の“のれん”が含まれています。
2. 減損損失の経緯
当社では、これまで「画像&ソリューション分野」「産業分野」「その他分野」の3つの開示セグメントに基づいて、事業管理を行ってきました。その中で、「画像&ソリューション」は、複合機・プリンターを中心とした“オフィスイメージング”、お客様が同一で販売面でシナジーがある“ネットワークシステムソリューション”、お客様が一部重なりかつ技術シナジーがある“プロダクションプリンティング”の3つの分野で構成され、当社の中核事業としてこれらのシナジーを活かしグローバルに売上拡大を目指し成長させていくのが従来の戦略でした。従来はその事業区分に基づいて、“のれん”などの資産の評価を行っておりました。
2017年4月にスタートした第19次中期経営計画は、基盤事業であるオフィスプリンティング、オフィスサービスにおいて“規模拡大から利益重視へ”と戦略転換を行い、生み出したキャッシュを成長事業へ重点投資することでリコーグループの事業構造を変えることを戦略目標としています。こうした戦略に応じた事業管理を行うために、2017年度より開示セグメントを、「オフィスプリンティング」「オフィスサービス」「商用印刷」「産業印刷」「サーマル」「その他」へと、より細かいセグメントに分けました。
同時に、これら6つの事業領域ごとに、実際のマネジメントの意思決定を実施し、さらに事業管理においてはより細かい単位でモニタリングが可能となる仕組みを構築しました。その上で、管理単位にそって新たに設定した資金生成単位において、戦略の転換に基づいて将来キャッシュフローを見直し、資産価値の評価を行った結果、減損損失を計上することとなりました。
3.减损减损损失対象のの主会について
今回、減損損失の主な対象となったIKON社とmindSHIFT社につきまして、経緯を補足します。
[IKON]
減損損失の大きなウエイトを占めるIKON社の買収は2008年に行いました。IKON社買収により、米国でのオフィスプリンティング、オフィスサービス、商用印刷の事業拡大を図ることができ、今後の新たな成長に活用できる顧客基盤や人材、ノウハウといった経営資源を確保できました。結果として、IKON社買収は一定の成果があったと認識しています。
一方で、クラウド/モバイル環境の進展、デジタル化の進展に伴うペーパレス化が想定以上に進み、オフィスプリンティング事業の競争が激化、単価下落が北米で顕著になっており、収益面において課題がありました。
第19次中期経営計画より、先進国におけるオフィスプリンティング事業については、規模の拡大から徹底した利益重視へと戦略の転換を進めており、それにより継続投資を前提としていた将来キャッシュフローを見直した結果、IKON社の買収を主とするのれん、有形固定資産および無形資産を対象に減損損失を認識することとなりました。
[Mindshift]
mindSHIFT社の買収は、2014年に行いました。mindSHIFT社の買収により、米国におけるサービス事業の拡大、サービス・オファリング(お客様の課題を解決するサービスメニュー)の開発や、顧客の課題を解決し、信頼を得るための人材やノウハウを獲得することができました。
しかしながら、クラウドサービスの急速な普及や、競争環境の激化など市場環境が変化したこともあり、収益性においては当初見込んでいた効果が今後も得られない可能性が高まってきました。
こうした環境変化を受けて、「リコー再起動」の下で、従来のオフィスサービス事業は利益貢献が期待できる事業へ集中し、本年2月に発表した成長戦略「リコー挑戦」において、リコーグループの強みの一つである顧客基盤にリコーならではの新たな付加価値を提供するための開発にリソースをシフトすることにいたしました。
これらの戦略転換を反映した将来計画を見直した結果、過去の戦略においてサービス事業の拡大を目的として買収した従来型のITサービス事業で発生した“のれん”を中心に減損を認識することとなりました。
4.今后今后の対応
行为とともに,买收时における买收価値评価をより行っまいりますますますのまいりのまいりのさらにさらにいたしいたしますさらに,买收后のます。なく,それぞれの案件に适しkpiを定めた上で,本社が适切に关键词ながらながら买收后のモニタリングを彻底しし
1. 2017年度業績影響について
2017年度業績において、当社の海外連結子会社であるRicoh India Limited(以下、リコーインド)に関連して117億円の損失を計上いたしました。
リコーインドは、2015年に不適切会計の兆候が認められた後、事業の再建に向けて経営陣の刷新、コスト削減などを進めてまいりましたが、残念ながら業績の改善に至ることができませんでした。そのような中で、2017年度に、改めてリコーインドの状況を精査した結果、財務支援を打ち切ることを決定し、2017年10月27日に公表しました。その時点で、債権など回収が見込めない資産に対する引当金として、65億円の費用を第2四半期に計上いたしました。その後、さらに資産の精査を進め、在庫、売掛金などの資産について今後の回収が見込めないものと判断し、第4四半期に52億円の引当金を計上しました。
2. これまでの経緯
リコーインドは、2015年度第1四半期(4月~6月)の決算報告を行った後、適切なコーポレートガバナンスの観点から会計監査人を変更いたしました。その後、同年度第2四半期(7月~9月)決算において、新会計監査人から一部社員による不正行為の兆候の指摘がリコーインド経営陣・同監査委員会に対してなされました。同社監査委員会は外部専門家を選任し社内調査を進めつつ、同社は、2016年4月13日にトップマネジメントを刷新して事業の運営体制を整え、提出が遅れていた2015年度第2四半期(7月~9月)の決算を2016年5月18日にボンベイ証券取引所に対して提出いたしました。
その後、リコーインドは不適切会計処理を継続調査し、2016年7月19日に修正結果を反映した同年度の損失見込みをリコーインドが公表するとともに、同日、リコーはインドの会社法審判所(National Company Law Tribunal)に対して、リコーインド事業再建のために増資の審査申請手続を開始しました。(増資実施同年10月15日)
また、当社としては、リコーインドの会長職にリコー本社執行役員を新たに派遣するなどし、新マネジメント体制の元、経理・財務機能の正常化、適切な会計報告の実施、再発防止策などの支援を行い、現地事業再建に努めてきました。
そのような中で、リコーインドの主要取引先であったFourth Dimension Solutions(本社:ニューデリー、インド国立証券取引所上場、以下「FDS社」)との取引関係が悪化しました。リコーインドはFDS社の複数の共同受注案件の収益性改善のために取引関係を見直すべくFDS社と折衝を続けてきましたが合意に至らず、FDS社による契約不履行も頻発したため、2017年3月にFDS社との契約の一部を解除し、かつ前渡金の返還を求めて折衝を続けていました。
一方FDS社は、2017年9月にリコーインドに対してインド破産倒産法に基づき会社更生手続開始の申立てを実施しました。手続の開始には至らなかったものの、これによりFDS社との係争が表面化しました。さらに同年10月26日に、FDS社から同様の申立てが行われましたが、前回同様に手続の開始に至りませんでした。
このような状況下で、当社としては、2017年4月から就任した山下社長の下、グローバルで聖域なき構造改革を断行する「リコー再起動」の方針に基づき、リコーインドに対する支援に関して再検討した結果、グループ全体の損失を限定するために、現状のままでは今後追加の財務支援を行わないことを決定し、2017年10月27日に開示を行いました。
その後、2018年1月29日に、リコーインドは、インド破産倒産法第10条に基づく会社更生手続開始の申立(*)を行うことを決議し、インド会社法審判所に対して申立てを行いました。
リコーインドはこれまで、事業の再建に向けて経営陣の刷新、コスト削減などを進めてきましたが、同社の主要取引先との関係が悪化したことなどにより、契約の不履行や、取引先からの債権回収ができないなどの事態が発生していました。今般、債務が履行できない状態となったため、取引先、社員、少数株主ほかステークホルダーに最良の選択としてこの度の申立てに至ったとしています。
当社としては、リコーインドの最大のサプライヤー、債権者かつ株主としてインド会社法審判所の判断を注視していきます。当社商品をお使いいただいているお客様へのサービスを低下させないことが極めて重要であると認識しており、サービス提供の継続、サービス品質の維持に最大限努めてまいります。今後の状況に関しましてご報告が必要な情報がございましたら、速やかにご報告します。
*インド破産倒産法第10条に基づく会社更生手続について
当該申立てを受けた会社法審判所により手続開始決定がなされると、管財人による財産管理が行われるとともに、債権者委員会による承認および会社法審判所による認可を目指して更生計画案の作成が行われる期間が設けられます。当該期間内に会社法審判所に更生計画案が提出されなかった場合その他インド破産倒産法所定の事由が発生した場合には、清算手続へと移行することとなります。
3. リコーインドにおける問題の要因について
インドはその他の新興国とは異なり、ITサービス中心に拡大しているマーケットであったため、地域の特性やビジネスモデルへの理解が十分ではなく、売上が伸長していた結果でビジネスが上手く推進できていると認識していました。その結果、急激な事業拡大を不自然な成長と認識できず、発覚が遅れました。
また、これまでは、海外販売子会社の管理について、本社より権限委譲された地域統括会社(4極:日本、米州、欧州、アジア)が主体となり、各地域の海外販売子会社を管理する体制となっていました。
その中で、リコーインドは海外子会社の中で唯一、現地で上場している子会社であり、インドの上場規則に則り、経営のガバナンス体制が整えられていました。それ故に、他の海外子会社とは異なり、地域統括会社によるチェックなどが甘くなっていた面もあったと認識しております。
さらに、リコーインドにおいては基幹業務システムが統一されていなかったため、不正の把握が難しい状態となっていました。また、内部通報制度においても、海外子会社から本社に直接通報する仕組みがありませんでした。
4. 再発防止に向けた取り組み
当社は、2017年10月に開示したように、リコーインドに対する財務支援方針変更の事態を厳粛に受け止め、グループガバナンス強化を目的とし、本社・地域統括会社・海外子会社との連携を軸とした、再発防止策に取り組んできました。
さらに、2018年1月に、リコーインドがインド破産倒産法第10条に基づく会社更生手続開始の申立てを行ったことを踏まえて、事業運営および組織強化の視点も加えた以下の再発防止策に取り組んでおります。
1)勘察
(ア)中期経営计画や事业计画立案·承认时,地址·企业の独性をしたリスク项目レビューのたた评価项目の设备
(イ)新闻国のカントリーリスク,新规·成长业务のリスクにに合成た子会议管理の実施
(ウ)海外子会社の事業管理を強化し、購買プロセスをグローバルで標準化
(エ)新闻事业领域における·事例事例ベストプラクティスを水平展开する仕组み构筑
2)経営致理性化学
(ア)地区统括会と本社の关键词会主管散系,监理部门が一体となっ海外子会の经理
(イ)本社机械が各ごとの事业の実施を确认できる仕组みの
3) 組織体制強化
(ア)本社に贩売会の统括组织设置と,地域统括会·社会社とと范囲·役割の再定义
(イ)本地监理·财务机械のの综合による,レポートラインと致原理责任所,レポートラインと定理。
4)コンプライアンスコンプライアンス化
(ア)海外子会社の現地幹部出向者に対して、事業管理や内部統制に重点を置いた役割や責任を明確にする教育の実施
(イ)アジア・パシフィック極への指名報酬委員会設置による、経営幹部の評価・監督の強化
(ウ)内部通报制度制度のグループ各社ででの整と全全従员员周知彻底,および,グループ全役职员が本社に直接通报できる通报通通窓口の设置
5) 監査強化
(ア)取引内容のチェック強化など内部監査の実効性向上のために、グローバル監査チームによる内部監査を実施
(イ)各海外子会社の会計監査人を、当社で採用している監査法人の系列に統一化し、海外子会社の会計監査人との連携を強化
6)它ガバナンスガバナンス化
アジア・パシフィック圏の基幹システムのアセスメント実施と、ITガバナンスが効いたシステム再構築
5. 人事上の措置について
リコーインドに関わる一連の事態を重く受け止め、2017年10月27日に、代表取締役社長執行役員に加え、取締役3名と執行役員1名が、月額基本報酬の15%を3ヶ月間返上することを発表しました。さらに、前取締役社長執行役員(2017年10月当時は特別顧問)につきましても、報酬の30%を3ヶ月分返上のうえ、2018年3月末をもって辞任いたしました。また、今般の決定により、旧体制の懸念に一定の目処がついたことから、取締役会長が任期満了をもって退任します。