省エネ・省資源を実現した位置検出機能付きブラシレス直流モータ及び位置制御システムです。
日本特許第5742025号発明名称“加減速・停止制御用ブラシレス直流モータ”が,平成28年度関東地方発明表彰において,神奈川県発明協会会長賞を受賞しました。
リコーでは,従来のステッピングモータの機能・性能を損なわず,直流モータで低消費電力,小型,軽量を実現する技術を開発し,2012年2月発売のカラー複合機imagio议员C5002シリーズに搭載しました。本技術では,ステッピングモータ特有の脱調現象,高周波異音や低周波振動の問題なども解決し,さらにモータの温度上昇も大幅に低減することができました。また脱調の心配がないためモータの自由な動きの実現も可能になりました。
図1。フルカラー複合機への直流モータ搭載効果
※消、費電力量:国際エネルギースタープログラムの測定法に基づく1週間分の消費電力量(Wh)
従来からリコーでは下記の種類のモータを使用していますが,ブラシレス直流モータはステッピングモータに比べて,効率,重量,大きさの面で優位な特徴を持ちますが,位置決め機能を実現するためには,センサやフィードバック制御が必要です。
また,ステッピングモータをオープンループ制御で駆動する場合,脱調を回避するために,実際のメカ負荷トルクに対し大きなマージン(安全率)で出力電流を設定します。このため大きな電力損出が生じます。
リコーでは,このブラシレス直流モータの制御システムを新たに開発しました。
表1 .リコーで従来から使用しているモータの特徴
(注意:ステッピングモータは定電流駆動,オープンループ制御)
位置制御用エンコーダ付きブラシレス直流モータと駆動システムの特徴をご紹介します。
1 .新型ブラシレス直流モータの特徴
2 .高速デジタル制御アルゴリズムを開発
制御回路は低価格マイコンを採用しながらも,高精度制御を実現した独自の制御アルゴリズムファームウエアを搭載しています。
また,フェールセーフアルゴリズムも搭載し安全性にも十分配慮しています。
制御パラメータは最大4種類設定が可能で,制御ICの集約化にも配慮しています。
3 .従来のステッピングモータと互換な指令信号インターフェース
パルス(クロック)入力タイプのステッピングモータドライバと互換なインターフェースを用意し,上位システムの変更無しでマイナーチェンジ機種への展開が可能です。
図2。ステッピングモータと直流モータ駆動システム比較
複数のモータを同時独立に制御できる多軸制御システムを開発し,
2013年5月発売のカラー複合機理光议员C8002 / C6502シリーズ,ならびに理光议员C6003 / C5503 C4503 / C3503 C3003シリーズに搭載しました。その後継機,および周辺機器にも採用されています。
周辺機器については,ドキュメントフィーダー,フィニッシャー,大量給紙トレイなどの用紙搬送用モータに搭載されています。
1 .多軸駆動制御システム
従来1マイコンで1モータを制御する方式から,複数個のモータを同時に制御する方式に対応するため,5軸制御タイプと8軸制御タイプの2種類のカスタム制御ICを開発しました。
また,スマートポジションモータの特徴である省エネ・省資源効果を多数個使用機種へも展開可能となり,より大きな省エネ・省資源効果が低コストで実現することができました。
2 .多軸駆動制御システムの特徴
図3。スマートポジションモータ多軸制御システム
図4.カスタム制御IC 8軸対応タイプ(左)と5軸対応タイプ(右)
エンコーダレスで回転位置検出を実現したブラシレス直流モータドライバICとこのドライバICを搭載したインナーロータブラシレス直流モータを開発し,2014年10月発売のデジタルモノクロ複合機理光MP6054/5054/4054シリーズ、理光MP3554/2554シリーズに初搭載しました。その後継機として2017年1月に発売されたデジタルモノクロ複合機理光MP6055/5055/4055/3555/2555シリーズ,および周辺機器にも搭載しています。
また,デジタルカラー複合機としては,2016年5月発売の理光议员C6004 / C5504 C4504 / C3504 C3004シリーズ,および周辺機器に搭載しています。
1 .エンコーダレス位置検出機能付きブラシレス直流モータドライバIC
ホール素子信号からエンコーダ信号を生成するブラシレス直流モータドライバICを開発しました。従来,エンコーダのような位置検出センサとモータドライバICは別部品でしたが,機能を一体化したモータドライバICにしたことで省スペース化や低コスト化,環境ロバスト性向上を実現しています。このドライバICを搭載したモータを使用することで,光学式エンコーダでは懸念のあった使用環境への展開が可能となりました。スマートポジションモータシステムの特徴である省エネ・省資源効果を、より多くの製品・機種に、より低コストで展開することができます。
図5。構成比較図(左:光学エンコーダ付き,右:エンコーダレスのブラシレス直流モータ)
2 .モータドライバICの特徴
図6.新開発モータドライバIC(左:RN5C711,右:RN5C772)
3 .採用のメリット
テクニカルレポート