現在,リコーの日本特許公開件数は2105件(2019年)であり,特許保有権利数では,国内は18000件以上,海外でも24000件以上で,計42941件(いずれも2020年3月末現在)となっています(表1参照)。
技術開発の成果である知的財産は,他社との競争優位性を図る重要な経営資産の一つです。そのためリコーでは,価値ある知的財産の創出を奨励するとともに,事業の保護と成長に貢献する知的財産の獲得と活用に取り組んでいます。国内外で実効性の高い特許獲得を継続して行っており,2015年3月期以降,海外での特許登録件数は国内での登録件数を上回っています(2020年3月末現在,図1参照)。
また,権利化後の保有特許については,将来の市場や事業を見極めることで不要な特許権を放棄し,保有権利の新陳代謝にも取り組んでいます。
日本公開特許件数 | 2105件(2019年) |
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日本保有特許件数 | 18017件(2020年3月末現在) |
海外保有特許件数 | 24924件(2020年3月末現在) |
表1:リコーの特許件数
図1:日本及び海外での特許登録件数の推移
(登録件数:その年度に特許登録された特許の件数)
リコーの知的財産活動は,1947年のカメラに関する特許出願から始まりました。1958年には初めて特許管理部門ができ,特許専任者第一号が生まれました。その後,事業拡大とともに知的財産部門の拡大と強化を図り,今に至っています。
現在,リコーの知的財産本部には,知的財産開発センター,知的財産戦略センターなどの組織があり,特許出願・権利化,渉外・ライセンスなどを,それぞれ担当しています。知的財産開発センターには,事業部や研究開発部門の知的財産活動を担当する複数の組織があり,総勢,約100名の人員を擁しています。知財担当者は,発明が創造されたら早期に特許出願・権利化できるよう,研究・開発の現場に密着した知的財産活動を実践しています。
また,各市場に適した価値ある知的財産をタイムリーかつスピーディーに獲得するため,海外の主要な研究・開発拠点には,知的財産組織と人員を配置し,時差のない現場密着型の知的財産活動を実践できる体制を作り上げています。
リコーでは2018年から自社が保有する特許・技術をより活用するため,全国の中小企業やベンチャー企業に有償で提供する開放特許に取り組んでいます。
本取り組みは,リコーが保有する特許を開放特許としてライセンスし,資産の有効活用を図りながら,中小企業やベンチャー企業の新たな商品開発や技術力の向上,さらには事業化による収益の向上に繋げていただくものです。
共通の目標を持つ機会の少なかった大企業と中小企業,異業種や他業界の企業がその枠組みを超えたビジネスの創出で協働し(オープンイノベーション),また,相互に事業への理解がより深まることで新たなサプライヤーや顧客になるなど,今までになかった関係が生まれます(コラボレーション)。この取り組みにより,リコーの知的財産の価値が社会を循環するようなエコシステムの構築を目指しています(図2)。
これからも,リコーは自社が保有する知的財産の活用可能性を追求するとともに,新たな価値を創造し提供することで,企業価値の向上につなげてまいります。
図2:開放特許イメージ
発明者に対しては,長期的且つ継続的に,質の高い知的財産創造活動と特許取得を奨励するために,各種報奨制度を設けています。また,技術部門における知的財産スキルを向上するために,ベテランの知財担当者が講師を勤めるレベル別の知的財産教育を,技術者の経験年数に合わせて実施し,知的財産力全体の底上げを図っています。
知的財産活動を行う知財担当者には,新任の知財担当者向け集合教育制度,在职培训による教育制度など,様々な育成プログラムを用意し,個人の知的財産スキルの向上を図っています。また,海外特許事務所への短期駐在制度,長期の海外駐在制度を設けているだけでなく,海外の弁護士とダイレクトなコミュニケーションを取りながら出願・権利化業務を行う機会を設けることによって,グローバルな知的財産スキルの向上にも広く力を入れています。
また,知的財産本部では,膨大な知的財産情報を,短時間で効率的に収集,整理,分析,加工し,知的財産以外の情報とも組み合わせてインテリジェンス化し,知的財産戦略の立案や,事業部や経営層への提案を行うことで,知的財産価値の最大化を目指しています。
今後も,知的財産活動のすべてを,“事業の保護と成長への貢献“という目的に集中することで,より高効率で強固な知的財産力を作り上げることを目指していきます。