社会的責任経営を実践する上で特に重要なことは,リコーグループのステークホルダーに対してどのようにエンゲージメントし、コミュニケーションを充実していくかということです。
私たちはステークホルダーとのコミュニケーションによって得た貴重なご意見を真摯に受けとめ、社内改革に繋げるとともに、NPO/NGO等の社会セクターとの協働を継続的に実施し、より効果的な社会的課題解決への貢献を目指しています。
社会的責任経営の段階は、そのベースとなる法律・規制などの「外部要求への対応」段階から、要求を超えた社会からの期待に積極的に応えるという「使命感と責任感に基づく自主的な活動」の段階、そして社会課題の解決と自社の成長や利益創出に繋げる「社会との共有価値創造」の段階に進化しています。
私たちは、こうしたすべての段階や活動に対して、グループ・グローバルなガバナンスとモニタリングを「CSRのマネジメントサイクル」の仕組みで実施しています。
本社では現場からの情報を様々なチャネルやツールで収集し、現場の活動を支援するとともに、本社と現場との定期的な意見交換や議論を通じて、相互にCSRのレベルアップを図る努力を日々行っています。
リコーグループは、企業の社会的責任に関するビジョンや目標、具体的な活動についての情報をステークホルダーにお伝えすることが、企業活動のさらなるレベルアップと企業価値の向上に不可欠であると認識しています。ステークホルダーとの重要なコミュニケーションツールのひとつである「リコーグループサステナビリティレポート」をより充実したものにするため、CSR分野や統合報告に関する専門家の方々をお招きして、ご意見やアドバイスをいただくとともに意見交換を行っています。また、それらダイアログの内容については経営層とも情報を共有し、経営やコミュニケーション活動の改善に活かしています。
本ダイアログは、社会的責任経営報告書、環境経営報告書、アニュアルレポートの3冊を統合し「サステナビリティレポート」として発行した2012年度から開催され、今回が5回目の開催となります。
今回のダイアログでは、価値創造の全体像、開示指標、ネガティブ情報の開示とガバナンスの記載を中心にご意見をうかがいました。
開催日 | 2017年4月13日 |
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場所 | 株式会社リコー 本社事業所 |
参加者 | 有識者
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リコーの企業価値向上サイクルについて、各々の価値の定義や開示指標のコメントが付加され、わかりやすくなっています。「技術力」の内容は、読み応えがありました。
リコーの研究開発体制が有している人材方針、風土、哲学、そうした特徴が生きた過去の成功事例などへの言及があると、更に説得力が高まると思います。
インドにおける不適切会計処理については、現在の状況下ではこのレベルの開示にならざるを得ないと思います。この数年を振り返りますと、日本企業で海外の子会社、あるいは出資先に対してきちんとガバナンスが効いているのかの反面教師となるような事案が増えています。世の中の関心は高まっており、リコーだけでなく、日本企業全体の課題だと思います。海外の取引先、連結対象先にどうグリップを効かせるか。「きちんとしたことができています、やろうとしています」というメッセージは重要だと思います。
自社事業が引き起こすネガティブインパクトの視点の弱さが気になります。トップインタビューでも、地球規模の社会的課題と事業活動を通じて社会課題を解決していくという言及のみになっています。自らが手がけている事業がどんなインパクトをもたらしているかを踏まえ、ネガティブインパクトを軽減することが重要です。リスクに敏感な投資家へのきちんとした説得力、対応策になるはずです。ネガティブな影響をしっかりと認識し、そのうえで手を打っているということが説得力を持つ時代になっています。
ビジネス・ストラテジーにおいて新しい事業分野の記載が増えた点は良いと思います。これらがステークホルダーの価値をどのように高め、リコーの将来の企業価値をどのように高めるのか、定量的な目標も交えながらストーリー仕立てで記載されるとより説得力があると感じました。
体制の見直しに伴いガバナンスの記載が拡充したことは良いと思います。ただ事実の記載にとどまっており、新体制が稼ぐ力をどのように高めるのか、政府の方針でもある「攻めのガバナンス」をどのように実践するのか具体的な記載があると更に良いと思います。
コンプライアンスを含むリスクマネジメントに関する記載が弱いと思います。トータルリスクマネジメントは実践されていますので、この部分の体制の詳細な記載はあったほうが良いと思います。主なリスクという形でレポートに記載されているものの、羅列されているだけで、実際に何をやっているのかということがここから読み取れません。コンプライアンスも含めリスクが顕在化しないような体制が構築されているのか、それを担保する企業風土があるのかは投資家の重要な関心事項です。企業価値の毀損につながるESGリスクにしっかり対応する堅牢な企業体質は、価値向上の基盤にもなると考えられており、それを踏まえ情報が開示されていれば非常に良いと思います。
昨年同様、価値創造全体像を簡潔な説明文とともに示しているので価値創出までの道筋の理解がしやすくて良いと思います。ネガティブ・ポジティブのバランス、過去・現在・未来、短期・中期、財務・非財務、機会とリスク、リスクとリターン、と言ったようにバランスを見て開示することが重要です。全体像の中でリスクがもう少し表現できたら単に美しいストーリーではなくて、リコーのリアルストーリーが伝わってきます。
指標設定するときに、数値化の前に言語化されると、リコーにとって本当に重要な定量化すべきKPIが見えてくると思います。リコーの目指す将来ビジョンが明確でないと、ビジョンと繋がったKPIは出てこない。既存の顧客満足度、従業員満足度の計算方法、そもそも作られた経緯などをレビューしていきながら、実際に目指したい方向性と整合しているのかどうかをチェックし、再度検討していただくのがファーストステップだと思います。
コーポレートガバナンス体制の変更を従来との比較で表現した体制図は、ビジュアル的にもシンプルで分かりやすいです。この変更(人数や委員会の分離)の背景にどのような社内議論、意思決定があったのかも簡潔に記載するとよいでしょう。
不適切会計処理についても、トップインタビュー及びガバナンスセクションにおいて経緯を開示しており、誠実な対応が伝わってきました。ポジティブな面だけでなく、ネガティブなインパクトを及ぼす事項についてもトップの言葉で積極的開示を行うと、読み手としては経営の統合思考の浸透度を理解することができます。ネガティブなイベントに関して重要なのが、フォローアップだと思います。アニュアルレポートのように、1年で切ったレポートではないので、今年のレポートでどういった対応をしたというところをフォローアップされると良いと思います。
これまでも有識者ダイアログでいただいたご意見をもとに、改善させていただいておりますが、仮に100%改善できたとしても世の中の期待値が変わっていれば、不十分です。期待値を把握するという意味でも、一年に一度こういった機会を持たせていただいたことに大変感謝しております。さまざまなご意見をいただき、表現方法で対応できる改善部分もありますが、経営の根幹に関わるところでご指摘いただいている部分が多々ありますので、今後の経営に活かさせていただきます。